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 B型肝炎ウィルス

  B型肝炎ウィルスは幼児期に感染した場合は90%がキャリアとなり、10%が慢性肝炎となります。成人の感染(性交渉など)の場合80%が不顕性感染となり、20%が急性肝炎を発症します。B型肝炎ウィルスは血液中から消失しても、cccDNAという形で肝細胞内に潜んでいます。つまりB型肝炎ウィルスに一旦感染すると、一生涯ウィルスをもった状態になるので、常に発がんの危険性があります。 10〜20歳代の若者に肝臓がんが出現する例もあるので、キャリアであっても油断なりません。通常HBs抗体が陽性であれば、治癒していると考えられてきましたが、実際は感染は続いているということです。生涯にわたって画像診断(エコーやCT)を定期的に受ける必要があります。   発がんの予測因子としてはHBs抗原とHBVDNAが用いられます。治療としてはペグインターフェロンと核酸アナログを用います。治療がうまくいくとHBs抗原、HBVDNA、ALT値が低下します。ペグインターフェロンによる治療は2年間に亘る上、週一度通院治療が必要です。仕事などでペグインターフェロン治療が不可能な場合は、核酸アナログを飲み続ける治療が必要です。  核酸アナログは使用し続けることになるのですが、シーケンシャル療法といって48週のペグインターフェロン治療に置き換える方法でHBe抗体が出現し、セロコンバージョンとなり離脱できる場合があります。 ただし、HBs抗原陰性、HBc抗体陽性、HBs抗体陽性となっている症例でも、リウマチなどの免疫療法によって肝炎ウィルスの再活性化が生じることがあるので、注意が必要です。あくまでもB型肝炎感染は一生涯つづくのが現状です。

 C型肝炎ウィルス

 C型肝炎ウィルス感染の場合、70%が慢性化し、30%が治癒します。我が国にC型肝炎に罹患している患者数は200万人と言われています。HCVのgenotypeは1bが70%、2aが20%、2bが10%です。従来治療としてインターフェロン単独、ペグインターフェロンとリバビリン、ペグインターフェロンとリバビリンとDAAs(Direct-acting antiviral agents)という組み合わせで治療が行われてきましたが、2014年、インターフェロンフリーで2種類のDAAsを服用する治療が出てきました。

   

ペグインターフェロン、リバビリン、DAAsを組み合わせた治療の問題点は、失敗例でDAAs耐性が生じることです。また新しい2種類のDAAsを組み合わせた治療では、副作用として5%に肝障害が生じ、5倍から10倍の上昇があれば中止しなければなりません。ただ、中止した後に治る(SVR)症例があることが知られています。,この治療でもあらかじめ耐性ウィルスのチェックが必要ですし、多くの薬が併用禁忌となっています。

 2014年に承認されたDAAs2剤の組み合わせは、Daclatasvir + Asunaprevir すなわちNS3阻害剤+NS5A阻害剤です。インターフェロンを使用しない治療の幕開けとなり、以後インターフェロンフリーの治療が始まりました。HCV genomeのシークエンスは、C-E1-E2-p7-NS2-NS3-NS4A-NS4B-NS5A-NS5Bとなっており、それぞれ別の部位を阻害します。この治療により、投与2週後にはHCV RNAが激減します。    

 一方、副作用も明らかになってきました。それは
1 ALT上昇、好酸球増多 → SVR率高い
2 発熱、T-Bil上昇、CRP上昇 → 胆のう障害?
3 頭痛、咽頭炎(頻度高いが軽症)   腎障害、多型紅斑(きわめて少ない)

  

SVR24達成率は80〜90%以上、ただしNS5A耐性では30〜40%程度しか達成しません。ですから、この治療を受ける前に保険適応となっていないウィルス耐性検査を受ける必要があります。画期的に高い効果が望める治療ではありますが、この検査結果で耐性が判明すれば治療を見合わせるという選択になります。また、今後出てくる新しい薬による治療はより有効性が高い可能性があるのですが、この治療で耐性を作ってしまうと治療に支障がでるので、今は「待つ」という選択肢も存在するわけです。

  

 上記に述べたDAAs2剤併用療法から2年を経て、さらに新たな治療薬が登場しました。2017年4月に承認されたレジパスビル・ソホスブビルの2剤を含む合剤です。この薬剤による12週間の治療は、I型のHCVウィルスに非常に有効です。その有効率はなんと、ほぼ100%です。それでも、DAAs2剤による治療を受けた症例では、薬剤耐性となっており、治療することができません。肝炎治療はウィルスの遺伝子解析が必須となってきており、もはや開業医で治療を開始することは困難で、基幹病院の肝臓専門医を紹介して治療を受けていただく流れになってきました。

  

 なお、新しい治療法では一月に薬代が100万円以上かかります。保険診療であっても、自己負担額が高額になるため、国や兵庫県などの自治体は独自に肝炎撲滅に向けて、医療費助成制度をもうけています。

 C型肝炎もB型肝炎の場合と同様、治療が奏功しても、エコーやCT検査を定期的に受ける事を怠ってはなりません。肝臓がんになりにくい状態にすることが目的の治療ですが、完全に発がんを抑えることは不可能です。ウィルスを消失させることと、肝臓癌の発症をなくすことは同じことではないのです。

肝炎治療医療費助成申請にかかる診断書を記載する医師について

 高額な治療費が必要となるウィルス肝炎治療ですが、兵庫県では医療費助成についての制度があり、稼働しています。(兵庫県のウェブサイトへ

 医療費助成を受けるには、治療内容ごとの専用様式の診断書が用意されており、これを書く医師は登録医師でなければなりません。当院は平成27年6月6日、平成29年5月27日の2回、肝炎連携フォーラムに参加いたしました。参加者名簿は上記の兵庫県のウェブサイトのリンクページから名簿がダウンロードできるようになっております。ただ、先に述べたようにこの治療は基幹病院の肝臓専門医が担当する方向性ですので、医療費助成に関連する診断書についても、紹介先で作成してもらうのがいいと思います。

 

脂肪肝については、こちらのリンクに解説いたしました。