便通異常|消化器内科|福井クリニック 長田区・新長田
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 便通異常の分類

 便通異常の分類は、原因別に器質的な異常、薬剤性の異常、機能性異常に分類されます。器質的な異常としては、腫瘍や腸閉塞など物理的な障害による便通異常です。薬剤性の異常とは、投与されている薬剤の作用や副作用によるものです。それらを除外すると、機能性異常が残りますが、通常多くの患者さんが悩んでおられる便通異常はほとんどがこの機能性異常ということになります。

 機能性異常の中には、便秘、下痢、または過敏性腸症候群のように複合的なものが含まれます。特に便秘の悩みを持つ患者さんが多いのですが、これには慢性便秘症と過敏性腸症候群の便秘型があります。これらは別の概念ですので、分けて考えます。

 慢性便秘症

 慢性便秘症は、便通が週2回程度より少なく、腹痛や膨満感、また食欲不振などの腹部不快感を伴う症状をいいます。排便回数は個人差がありますので、回数が少ないだけでは便秘症とはいいません。多い症状としては、いきみ、ガス、硬便、腹部不快感などがあります。一般的には生活習慣に由来する習慣性のものです。腸に長く便が停滞すると、水分を失って固くなり、排便が困難になります。便秘症の治療は、腸内細菌叢の正常化・腸内水分量の増加・蠕動運動の正常化などをターゲットに行います。生活面では、水分摂取の適正化、植物性油脂の適度な摂取、線維質の多めの摂取、適度な量の食事などを目標にします。当院での治療の特徴は腸内フローラの正常化を達成することにあります。多くの人は下剤に頼りがちになり、乱れた腸内フローラを改善することがありません。これでは、大腸癌など将来のリスクを下げることができず、健康な身体を維持することはできません。 最近、従来の便秘症治療薬に加え、続々と新しい治療薬が登場しています。これらの薬剤は、従来薬のもつような欠点がなく、自然な働きをするように開発されているのが特徴です。従来使用されてきた漢方薬、センナ系の薬剤や酸化マグネシウムにも欠点があり、その副作用について完全に無視することはできません。最新の医学に基づいた新登場の薬剤は、自然な排便を実現するためによく工夫されています。

 過敏性腸症候群(IBS)

 お腹の痛みや調子がわるく、それと関連して便秘や下痢などのお通じの異常(排便回数や便の形の異常)が数ヵ月以上続く状態のときに最も考えられる病気です。原因はわかっていませんが、ストレスが原因と言われています。最近、脳の研究によって過敏性腸症候群の人は通常の人と比べると、問題に対処する際に迷いが多いことが示され、それがストレスの原因になっているのではないかと考えられるようになってきました。またうつ病や不安障害を合併して入る場合も多いことがわかっています。治療薬はトリメブチンマレイン酸・ラモセトロン塩酸塩などがありますが、この場合でも腸内フローラを改善する治療を優先します。それだけで症状が改善する場合もよく見受けられるからです。

 便秘を治療する意義

 過敏性腸症候群の患者は認知症リスクが高いことがわかっています。また生存率をみると、慢性便秘症の患者は生存率が低く、過敏性腸症候群や慢性便秘症では、すべての心血管死亡率が高く、脳卒中による死亡率も高いことが示されています。従来多用されてきた酸化マグネシウムの欠点としては、高齢者や腎機能障害例では、高マグネシウム血症を来たしやすいことも示されており、今後より自然な働きをする新しい薬剤の活用が増えてくると思われます。