秋期の病気|内科|福井クリニック
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 食中毒

  秋は食中毒が多発する季節です。比較的気温の高い日も多く、食品が傷みやすい時期だからです。

 近年の食中毒の傾向として、もっとも多いのがカンピロバクターによる感染性腸炎です。主に外食時に焼肉店や焼き鳥店などで感染する場合が多いです。鶏肉の6割にカンピロバクターが付着していると言われています。決して生食はしないようにしましょう。カンピロバクターは熱に弱い菌ですから、十分に加熱してあれば安全です。しかし、肉を扱う店では菌の付着した手で、たとえば野菜サラダを作る場合も想定されます。ですから、かならずしも肉からとは限らず、サイドメニューから感染する危険性もあります。

 次によくみられるのが、ノロウィルスによる胃腸炎です。ノロウィルスに感染している人が調理することによって、料理を食べる人に感染します。お弁当の仕出しや居酒屋などで食中毒がよく起こります。ノロウィルスの胃腸炎は通常激烈です。吐いたり下したりを繰り返し、トイレから出られない状態になります。ノロウィルスは生牡蠣から感染したり、感染した人や、感染した人の吐物や便から容易に感染します。今年問題になっているのは、ノロウィルスが変異を起こしたらしいということです。今年のノロウィルスは数年前に大流行したように、一旦流行しだすと大流行になる恐れがあります。これまでの免疫が役に立たないからです。

 牡蠣の生食では、A型肝炎も問題です。倦怠感や黄疸を伴う場合もあります。血液検査で診断することが重要です。

 大腸菌による食中毒は、死亡事故につながりますので、さすがに最近はめったにありませんが、豚や牛の肝臓の生食はO-157による食中毒事件が多発したために、法律で禁止されました。激烈な症状で死亡する場合があります。

 これらの食中毒では、急性期には安静と点滴による補液が必要です。高齢者や体が弱っている方は、きちんと処置をしないと命に関わる場合があります。事例に応じて抗生物質を選択して投与します。

 寄生虫による食中毒

胃アニサキス症の内視鏡画像

 特殊な食中毒としては、アニサキス症(上の写真)に代表される魚介類の寄生虫による食中毒があります。鯖にはアニサキスが寄生しています。このため、従来鯖の生食は避けられてきました。しかし、最近では寿司店などで生の鯖が出されることが多くなりました。アニサキスは白い糸のような形をしていますが、大きさは様々です。アニサキスは皮膚の直下にいることが多いので、料理人は細かく包丁を入れて調理します。しかし、鮮度が落ちるとアニサキスは肉の中に移動してしまいます。また包丁からまぬがれるくらい小さなアニサキスもいます。またよく噛んで食べることで、ある程度予防できますが、小さい虫体の場合はまぬがれるでしょう。アニサキス症は腹痛が激烈なため、開腹手術されるケースもありますが、診断さえつけば虫体を内視鏡的に摘出するだけで治ります。また、アニサキス自体も時間の経過とともに死んでしまいますので、自然治癒もありえます。

 ひらめは高級な寿司ネタですが、ひらめにも寄生虫がいる場合があります。クドア・セプテンプンクタータといって、養殖場にまぎれこむと、ひらめに感染してしまいます。冷凍することで予防することができますが、品質が低下してしまうので、養殖業者側の品質管理にまかせるしかありません。

 馬刺しによる食中毒はあまり知られていませんでしたが、近年増加しています。これは馬に寄生するサルコシスティス・フェアリーという原虫が原因です。この寄生虫も肉を冷凍処理することで感染を防ぐことができます。

  

 Weil病(レプトスピラ症)

  

  ワイル病は病原体レプトスピラによる人獣共通感染症です。排水溝の掃除など、下水の流れる場所を掃除した時など、ネズミの尿が皮膚に付着して感染します。土壌に長く留まるため気づかないうちに感染します。

 症状は発熱や感冒症状と腰痛から始まります。腰痛がひどい場合は、整形外科を受診する方もあります。しかし、続いて眼球結膜が充血したり黄疸が出たりします。医療機関に受診しても内科医が感染症に精通していないと、診断が遅れることがあります。

 治療が遅れると急速に重症化して出血傾向や腎不全が進行します。できるだけ早く治療を開始することが大事ですが、速やかに入院対応するべき疾患です。

 アレルギー性鼻炎

  アレルギー性鼻炎は春と秋にピークがみられます。秋には雑草などの花粉が原因で起こる場合があります。鼻水が止まらず、鼻づまりなどで苦しい思いをしますが、現在は様々な抗アレルギー薬があり、副作用が少なく、非常に使いやすい薬も出ております。市販薬に頼らず、受診される方が賢明です。

 秋の植物アレルゲンとしては、セイタカアワダチソウ、アキノキリンソウ、ブタクサ、カモガヤ、イラクサ、ヨモギなどがあります。また動物アレルゲンとして、ダニの場合もあります。アレルギーの診断は採血だけでできますので、ぜひ受診してください。

  

 気管支喘息

  

  気管支喘息の診断には肺機能検査が重要です。当院は禁煙外来を行っており、COPDの診断を行う必要性から、積極的に肺機能検査を行っております。気管支喘息においてもCOPDと同様の閉塞性障害が生じます。ただ、治療は異なります。気管支喘息の病態としては、気管支に常に炎症が起こっています。ですから、発作がなくても日頃から吸入ステロイドを中心とした薬を使い続けることが大事です。最近は薬の質が向上しましたので、ほとんどの患者さんは入院することなく、処方された薬のみでコントロールされています。